投稿

ラベル(ブリヤートの歌)が付いた投稿を表示しています

【ブリヤートの歌】二つの黒い瞳で Хоёр харахан нюдөөрөө

イメージ
  今回はブリヤート民謡「Хоёр харахан нюдөөрөө」(二つの黒い瞳で)を翻訳します。    この歌の内容について、ブリヤート語劇や民謡・舞踊コンサートを上演する老舗の芸術団体「バイカル劇場」による楽曲解説によると、歌の主人公は片想い相手の娘に話しかけ将来の素晴らしい生活を約束するものの、いい返事を得ることができない…という筋の遊び歌だそうです。  作詞・作曲者についてはインターネットで調べた範囲では分かりませんでした…。どなたかご存じの方はご連絡ください。  ブリヤーチヤ共和国ではここ10年ほど民謡の現代アレンジが流行っていますが、この楽曲もアレンジにより再び人々の耳に入る機会を得た曲の一つです。2022年3月には、モンゴル出身のブリヤート人歌手Ganaとバイカル劇場による現代アレンジを施された楽曲がリリースされ、一時期その曲とダンスがブリヤート人界隈でバズりました。YouTubeではTik tokやInstagramに投稿されていた当時の踊ってみた動画が見ることができます。 Хоёр харахан нюдөөрөө 二つの黒い瞳で 1. Хадамал тахын түбэрөөндэ  馬の蹄鉄の足踏みで Хадын шулуу хамхарна, 山の石は割れるよ Хайратай гансым илдамда 愛するただ一人の可愛い子に Харахан зүрхэм уярна.  黒い心はやわらぐよ Харыш наашаа инагни 見てよ、僕の方を、愛する君よ Хоер харахан нюдөөрөө 二つの黒い瞳で Түрэл hайхан нютагтаа 生まれた美しい故郷で Түбхинэжэ hуухабди. 僕たちは静かに暮らそう 2. Тарган агтын түбэрөөндэ 太った馬群の足踏みで Талын шулуу хамхарна, 平原の石は割れるよ Танил гансым илдамна よく知るただ一人の可愛い子に Тайбан зүрхэм хүлгэнэ. 安らいだ心は動き出すよ Харыш наашаа инагни 見てよ、僕の方を、愛する君よ Хоер харахан нюдөөрөө 二つの黒い瞳で Түрэл hайхан ню...

【ブリヤートの歌】真っ赤なユリ(Улаалзай)

イメージ
今回紹介するのはブリヤート民謡の「真っ赤なユリ」(Улаалзай)です。 紹介する動画の歌手はСарюна Бимбаеваサリョーナ・ビンバエヴァです。 彼女は「Мүнгэн хонхонууд(ムンゲン・ホンホノード:ブリヤート語で銀の鐘)」というブリヤート民謡を歌う子ども向けボーカルスタジオの出身で、スタジオの中でもその歌唱力と表現力により群を抜いて有名なアーティストの一人のようです。 現在はどのような活動をしているのかは未調査ですが、大御所歌手になるポテンシャルをビシビシと感じるので活動を続けていてほしいなあと願っています。 オラールザイはLilium martagon マルタゴンリリー というユリの一種です。 マルタゴンリリーはヨーロッパからシベリアに至る広大な地域で自生するそうです *1 。 この歌詞には「真っ赤なユリ( Уб улаахан улаалзай )」という表現が繰り返し出てきます。Улаан(オラーン)やУлаахан(オラーハン)はブリヤート語で「赤色」を意味します。 Улаа лзай( オラー ルザイ)という語から予想するに、モンゴル高原~シベリアにかけて咲くマルタゴンリリーの仲間は赤色なのでしょう。 今回の翻訳では、曲名は「真っ赤なユリ」にしてみました。マルタゴンリリーだと厳つい印象が出てしまうことと、ブリヤート語のУлаалзай(オラールザイ)の持つ意味を活かしたかったことが理由です。 ちなみに、у б улаахан(オヴ オラーハン)の「у б(オヴ) *2 」のように色彩を表す言葉(この例だと улаахан赤色 )の前にその単語と似た響きの強調用単語をつける表現はモンゴル諸語によく見られます。 ハルハ・モンゴル語でいくつか例を挙げてみます。 ув улаан(オヴ オラーン) 真っ赤な цав цагаан(ツァヴ ツァガーン) 真っ白な хав хар(ハヴ ハル) 真っ黒な *1 札幌百合が原公園webサイトより  https://yuri-park.jp/odheo/10525/ *2 ブリヤート語では原則としてв(v)の字はあまり使わず、モンゴル文字でbと表記される部分はб(b)で転写するため、 у в  улаанは у б  улаанと書きます。ただし、ブリヤート語では語頭を...

【ブリヤート語の歌】ヨーホル・ナーダン(輪になっておどろう)

イメージ
今回はブリヤートの有名な民謡「ヨーホル・ナーダン」を紹介します。 Ёохор наадан、Ёхор наадан、Ехор нааданなど複数の表記ゆれがありますが、読みは全てだいたい一緒なので以下はカタカナで表記させていただきます。  本記事タイトル「ヨーホル・ナーダン(輪になっておどろう)」の()内の日本語訳は「ヨーホル・ナーダン」というブリヤート語の訳ではありません。この歌を歌いながら手をつないで輪になって踊る様子から「これブリヤート版のWAになっておどろうでは…⁈」と私個人のセンスで付けた副題みたいなものです。個人的には結構この副題を気に入ってるので、ブリヤート語民謡を収録した本が出る場合にはこれ使ってくれないかな?と他力本願的に思っています。 それではヨーホル・ナーダンの本当の意味は何かというと、「ヨーホル」は手をつないで時計回りに回るブリヤートの踊りのことを指し、「ナーダン」は遊び全般のことを指します。ヨーホルがよく踊られる時期は、サガールガンというチベット仏教の旧正月の頃です。ウラン・ウデ市では、サガールガン時には市中心部の劇場前広場で大きなヨーホルが毎年踊られているようです。回る方向は時計回り、正確には「太陽の回る方向回り」が正式とされているようですが、反対向きに回っている人たちの動画も割と見かけます。 ヨーホルの種類はたくさんあり、今回紹介するヨーホルはそのうちのひとつです。今のところ私がヨーホルとして感知しているメロディーは3つほどですが、もっとそれ以上の数のヨーホルがあると考えられます。Youtubeでヨーホルと検索すると、「イルクーツクのヨーホル」「トゥンカのヨーホル」など「(地名)のヨーホル」がいっぱい出てきます。みなさんのお気に入りのヨーホルを見つけてみてください。 おまけですが、Alihan Dzeが近年出した曲のいくつかはヨーホルのリズムを参考にしたらしいのですが、ちょっと聴いただけではヨーホルの何を参考にしたのかが分からないメロディーラインの曲もあります(ちゃんと分析すれば分かるのでしょうがこのブログではやりません)。ヨーホルと名の付くメロディの異なる曲がいっぱいあることも併せて考えると、極論を言えばヨーホルという歌詞が入っていてブリヤート人が輪になって踊ればそれがヨーホルなのでは?と感じました。 今回の歌詞翻訳はメロデ...

【古モンゴル語+現代モンゴル語+現代ブリヤート語の歌】熱情(Khaluut)/ Ginjin, Saryuna, Alihan Dze

イメージ
今回はモンゴル国の大人気ラッパーGinjin、ブリヤートの人気歌手SaryunaとラッパーAlihan Dzeが贅沢にコラボした曲「Khaluut」を翻訳しました。 この三人がコラボした経緯について簡単に語られたネット記事があったので、それに関しては次のブログ記事で翻訳して紹介しようと思います。 Saryunaは古代モンゴル語 、 Ginjinは現代ハルハ・モンゴル語 、 Alihan Dzeは現代ブリヤート・モンゴル語 で歌っています。この事実だけでモンゴル諸語マニアはご飯三杯くらいいけるんではないでしょうか。 この曲の公開日は2020年2月2日で、このブログ記事執筆時の2020年10月12日現在で190万再生を突破しています。モンゴル国の人口が310万人強、ブリヤート共和国に至っては100万人にもとどかないことを考えると、モンゴル人やブリヤート人のこの楽曲への関心の高さがうかがえます。 Khaluutはモンゴル国の人気映画シリーズ「Single Ladies」の第4作目の主題歌となったため、公式PVではちらちらと作品の舞台となった古モンゴル帝国風の映像が挟まれています。映画は現代に生きる独身モンゴル人女性たちがチンギス・ハーンの時代のモンゴルに飛ばされちゃってどうしよう!というものみたいです。映像が素晴らしかったので映画本編をいつか見てみたいです。映画を見てからだと、この歌詞の意味ももっと分かるのかもしれません。 (ちなみに、歌詞と突き合わせながらこの曲を聴くと分かるのですが、Alihan Dzeパートの歌詞詰め込み具合がいつもの彼の楽曲以上にやばいです。たぶんこれ人に歌わせる気ないです。一応、翻訳の際は頑張って拍取りつつ「あーなるほどこの拍と拍の間にこの単語までを詰め込んじゃうのね」と歌って確認しましたが、これは一人/一本撮りでは歌うの辛いし普通の人があのメロディーに合わせて書くリリックではないです。歌えるかもしれませんがライブ向きではない。息継ぎって概念知ってる?キリル文字が読める皆さんはAlihan Dzeパートを歌ってみてぜひ彼のやばさを体感してください。ここまで結構文句を言いましたが、何度か練習して一応原曲スピードで歌えるようにはなったので人間が歌えないことはなんだなと分かったのですが、他の二人パートが歌いやすすぎと感じるくらいにはここだけ難易度違いま...

【ブリヤートの歌③】約束(Amlal)/ Wakka

イメージ
今回は内モンゴル出身のブリヤート人ラッパーWakkaのメジャーデビュー曲「約束」(Amlal)を翻訳します。 正式な曲名は「Amlal (бурятка с плохим характером / муу зантай буряад басаган)」――「約束(性悪なブリヤートの女の子)」です。 ブリヤート語はたくさん単語を詰め込むようなラップは日本語と同じ理由(母音が多いから)で難しいと思っていたのですが、彼女はその予想を見事に破壊してきて鳥肌がたちました。 Wakkaはロシア・ブリヤート人とは異なる発音をしているので、ロシア・ブリヤート人の歌う歌を聴きなれてから彼女の歌を聴くと諸々の違いが楽しめると思います。 歌詞と突き合わせてラップを聴くと、ハルハモンゴル語と似たようなリダクションをしていることに気づくと思います。なるほど音を省略するならここなんだな、などの見当をつける勉強にもいいと思いました。加えて、ロシア・ブリヤート人はhの発音が苦手になってきているという話もあるのですが、彼女は内モンゴル出身の恐らくシネヘン・ブリヤートの方のため、hの発音がしっかりхと分けられています。 楽曲解説というよりも発音マニアみたいな文章になってしまいました。 PVでWakkaがさまよっているのは中国内モンゴルのどこかの都市のようですが、特定ができませんでした(2020年10月3日現在)。トランクを持ってさまよっているということは、家出をしたのでしょうか、自宅から独立したけれど行く当てがないのでしょうか、それとも旅の途中なのでしょうか。PVはニュアンスなんだよという意見もわかりますが、映像で何を表現したかったのか考えたい派なので、何か思いついたらこの記事の続きを書くかも。書かないかも。 また、関係ないかもしれませんが、Хатхур Зу(Hathur Zu)も中国の都市の中でブリヤート語ラップを歌うPVを出していました。ブリヤート語楽曲のPV背景に中国を選ぶ理由はなんでしょうね。シネヘンを想起させるためなのか、異国感を出すためなのか、それとも単に現代の中国人気に乗ったものなのか…?だれかPVの背景について考察している論文や記事があったら教えてください。 そういえば、曲のサブタイトルは「性悪なブリヤートの女の子」ですが、なんで「性悪」ってつけたんでしょう。翻訳をしていると、好きに...

【ブリヤート語の歌①補足】あいさつの歌別バージョン

イメージ
今回は、先日紹介した「あいさつの歌(Амаршалгын дуун)」についての補足と、別バージョンの歌詞の翻訳をご紹介します。 前回の記事で掲載した「あいさつの歌」の動画について「※この動画の後半は同じ歌かどうか確認できなかった」としましたが、調べてみたところ後半部分も「あいさつの歌」だったようです。前半と後半でメロディーが異なるので違う曲かもしれないと思っていましたが、「あいさつの歌」には複数バージョンの歌詞とメロディーが存在するらしく、どうやら前回紹介した動画は2つの異なるバージョンを歌っているようでした。 ロシアでよく使用されるSNSのVKの音楽カテゴリで「Амаршалгын дуун」と検索すると、前回翻訳しなかった方のメロディー(前回記事の動画の後半部分)の方もいっぱい出てきました。 というわけで、今回はもう一つのメロディーの「あいさつの歌」の歌詞を訳してみます。 今回ご紹介する歌詞は、シネヘン・ブリヤート出身の有名な女性歌手ソクティンドルジン(Согтын Должин)の歌う「あいさつの歌」の歌詞です。 ※歌手により細かいところが異なったり、違う歌詞をつけていたりするので余裕があればそっちも別の機会に色々調べてみたいです。 ------- あいさつの歌 (ソクティンドルジン版) Амаршалгын дуун (Дуушан:Согтын Должин) Аялгаар һайхан дуунуудаа 旋律美しきわれらの歌々を Ажалша таанартаа дууланам. 働くあなたたちに歌おう Алаг эреэн зүрхэнһөө 色とりどりの心から Амар мэндые хүргэнэм даа. 幸福と安泰の祝詞を贈ろう Дууша суута таанартаа 声高に歌うあなたたちを Дуулажа дурдажа байнам даа. 歌い愛しているのだよ Дуран сэдьхэл хоёрһоо 愛と心の ふたつより Дуулаха дурамни хүрэнэл даа. 歌うわたしの愛を贈ろうぞ Бахарантай һайхан нютагамнай 誇り高き美しきわれらの故郷 Баянхан байдалаар найдамтай даа ゆたかな生活で望みあるよ Адуу малаа үсхэжэл 馬や...

【ブリヤートの歌①】あいさつの歌/ Амаршалгын дуун

イメージ
今回はブリヤート語の歌「あいさつの歌」を日本語に訳してみようと思います。 これは客人を迎えるときに歌われる非常にポピュラーな民謡です。私自身も、2017年冬にロシアのブリヤート人の村を訪ねたときにこの曲で出迎えられた経験があります。翌年夏に中国のブリヤート人の村で車に乗せていただいたときに、カーステレオから流れてきたのもこの曲でした。 ブリヤートでは非常に有名なこの歌ですが、おそらく正確なタイトルがついているわけではなさそうです(ついていたらごめんなさい)。この歌はブリヤート人であれば大体の方がご存じのようですが、タイトルを尋ねると「うーん、あいさつのときに歌う歌?」と割と困った困った回答をされることが多かった気がします。 ここで紹介するYoutube動画にはモンゴル語ハルハ方言で「あいさつの歌」とタイトルがつけられていたため、今回はそのタイトルを採用させていただきます。 ※この動画の後半は同じ歌かどうか確認できなかったため翻訳を省略。 --------- あいさつの歌 Амаршалгын дуун Аяар холын айлшадууд  遠くからの客人たちよ Алгаа дэлгэн золгоё  手のひら広げあいさつを Амар мэндэ та мэндэ  おげんきですか こんにちは Адуу мал hүрэг мэндэ амар  馬や家畜の群れよ こんにちは Нютаг холын айлшадууд  故郷遠き客人たち Нюур ушаран золгоё  顔をあわせあいさつを Нүхэд мэндэ та мэндэ  友よげんきか こんにちは Нютагаар бүгэдээрээ мэндэ амар  故郷の皆で あいさつを ---------